マルク・シャガールは20世紀の芸術界を彩った異彩の存在です。
彼の作品は、色彩豊かで幻想的な表現が用いられることがよく知られています。
生涯を通じて「愛」と「幻想」をテーマに、数々の名作を生み出したシャガールの人生はどのようなものだったのでしょうか。
本記事では、マルク・シャガールの生い立ちや芸術スタイル、彼の人生に影響を与えたエピソードを探求していきます。
幼少期からパリへ!マルク・シャガールの生い立ちと才能とは!?
1887年7月7日、ロシア帝国(現ベラルーシ)のヴィテブスクという小さな町でマルク・シャガールは生まれます。町の人口の半分はユダヤ人が占め、ハシディズムの中心地として文化的伝統を持っていました。
ハシディズムとは、ユダヤ教の超正統派文化のことです。幼少期のシャガールはハシディズム文化に囲まれて育ち、これが、彼の後の作品に強く影響するのです。
幼い頃から絵を描くことに強い興味を持っていたシャガールは、家族からも才能を認められ、支援を受けます。
地元の美術学校に通った後、サンクトペテルブルクにある美術学校で絵画技術をさらに磨き上げました。
1910年にはパリに移住し、多くの前衛的なアーティストたちと交流します。アンリ・マティスやパブロ・ピカソなどの影響を受け、独自の作画スタイルを確立していきました。
彼の作品は、鮮やかな色彩と幻想的なモチーフを特徴とし、パリの美術界で注目を集めます。
マルク・シャガールの生い立ちとパリへの移住は、彼の才能を開花させ、独自の芸術スタイルを確立する上でとても重要な要素となったのです。
愛と幻想の表現!マルク・シャガールの代表作!
マルク・シャガールの作品は、彼が生きた時代や場所、彼自身の心情を反映して様々な表情を見せてくれます。
初期のころはキュビズムの影響も受けつつ、故郷へのノスタルジーを見事に表現しました。鮮やかな色彩と幻想的な表現は、作品を鑑賞する者の心を強く揺さぶります。
彼の代表作と、そこに込められた愛と幻想の物語について見ていきましょう。
故郷ヴィテブスクへの愛と記憶の象徴『私と村』
私と村(1911年)は、シャガールがパリに移り住んで間もない頃の作品です。
彼は、キュビズムの影響を受けつつも、平面的な色彩と幾何学的構成の中に、自身の故郷の記憶を織り交ぜました。
この作品は、故郷ヴィテブスクの風景や人々、動物たちが、夢のように混ざり合った幻想的な世界を描写し、シャガール初期の代表作として広く知られています。
妻ベラ・ローゼンフェルドへの深い愛『誕生日』
誕生日(1915年)は、妻ベラとの結婚を祝して描いた作品です。
シャガールとベラが初めて誕生日を祝った時の喜びと幸福感を描き、地上から浮かび上がる2人の姿は、現実を超えた夢のような愛を表現しているようです。
しかし、この作品の時代背景には第一次世界大戦があり、国境の封鎖によって2人は引き離されてしまいます。
改めて作品を見てみると、後ろからキスをする男性の表情は、愛する人と離れることの悲しさや苦痛といったものをひしひしと伝えているようにも感じさせます。
幻想的な視覚表現でシャガールの感情を表現『世界の外のどこへでも』
世界の外のどこへでも(1915〜1919年)は、幻想的な視覚表現と深い感情表現が見事に融合した作品です。
この絵には、現実を超えた場所へと旅立つ(ロシアを出て広い世界に羽ばたきたい)という本人の願望が描かれています。
顔が半分浮いている男性はシャガール自身であり、空を飛び、地上(現実)から解放されるシーンは、愛と自由を追い求める戦争当時の彼の心象を見事に表しています。
あるいは、彼の歴史を学んだ者にとっては、芸術家としての成功と故郷への複雑な思いが交錯しているようにも見えます。
鑑賞者によって無限の可能性を感じさせる一作です。
色彩の魔術師シャガールの才能が詰め込まれた作品『青いサーカス』
マルク・シャガール晩年の作品であり、38点にも及ぶリトグラフのサーカスシリーズ。
人々が喜び笑いあうサーカスは、人生と愛をテーマにするシャガールにとって格好のモチーフでした。また、彼はときにサーカスというものを悲劇的なものとして捉えていたようです。
青いサーカス(1950年)は、サーカスシリーズの中でも特に色彩豊かで幻想的な作品です。
躍動感あふれるサーカスのパフォーマンスは歓喜と愛の感情を表現しており、シャガールの作品にはしばしば見られる浮遊感と幻想的な要素がふんだんに取り入れられています。
現代美術への影響!マルク・シャガールの作品がもたらす遺産!
マルク・シャガールの芸術は、独自のスタイルと深い感情表現によって現代美術に多大なる影響を与えました。
彼の作品は、今もなお多くのアーティストや鑑賞者にインスピレーションを与え続けています。
1910年にパリに移住したシャガールは、エコール・ド・パリの重要なメンバーとして活動します。
エコール・ド・パリは、数多くの国際的なアーティストが集まり、前衛芸術運動をリードするグループでした。
彼の作品はこのメンバーの中でも際立っており、彼自身の独自性を強く主張しています。彼の作風は、幻想的なスタイル、大胆な色使いや浮遊感のある構図が特徴的です。
感情と色彩の融合した作品は鑑賞者の心をつかみ、溢れ出すインスピレーションの波は、現代の抽象画やシュルレアリスムに強い影響をもたらしています。
マルク・シャガールの作品は、現在もニューヨーク近代美術館やパリのポンピドゥー・センター、ロシアのトレチャコフ美術館など、著名な美術館で観覧することが可能です。
現代でもなお、彼の作品は高く評価され、多くの観覧者を魅了し続けています。
さいごに|マルク・シャガールの芸術は愛と幻想の探求だった!
マルク・シャガールは、生涯を通じて愛と幻想を描き続けた画家でした。
彼の作品は、鮮やかな色彩と幻想的なモチーフで満たされ、見る者に深い感動を与えます。
彼の愛の物語は、彼の人生と創作活動の中で織り成され、ベラ・ローゼンフェルドとの深い愛情や戦争による試練を乗り越えた後も、作品に豊かに反映されています。
彼の作品は、現代美術にも多大な影響を与え続け、その魅力は未来永劫にわたり続くことでしょう。
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